金沢大学医薬保健研究域薬学系我々はこれまで、増殖・癌化・分化・細胞死に対するV-ATPase阻害剤の寄与について、選択的阻害剤を用いて検討してきた。その結果、V-ATPaseの選択的阻害剤が各種細胞の増殖を阻害したり、分化や細胞死(アポトーシス)を誘導することを、PC12細胞やM1細胞を用いて明らかにして来た。更に、プロトン輸送のみを特異的に阻害するプロジギオシンが様々なプロトンポンプを脱共役するH^+/CΓシンポーターであること、しかし細胞に投与した場合は主として酸性穎粒に作用するらしいこと、V-ATPase阻害剤と同様に分化・細胞死誘導作用を示すことを明らかにして来た。本研究においては,(1)バフィロマイシン類やプロジギオシン類のプロトン輸送阻害機構、(2)それらの増殖阻害、分化・細胞死誘導機構、(3)V-ATPase阻害剤の癌細胞に対する選択毒性と機構を明らかにし、(4)構造活性相関から、癌細胞の選択的増殖阻害に必須な構造を明らかし、理想的制癌剤の有機合成開発を目指した。分化誘導・増殖阻害・細胞死誘導の各作用を、PC12細胞を中心に検討し、V-ATPase阻害活性及びpHとの相関を明らかにした。特にV-ATPase阻害剤として知られている薬物について検討したところ、分化誘導・増殖阻害・細胞死誘導の各作用とV-ATPase阻害活性及びpH上昇作用との間に相関の見られない場合があることが判明した。新規合成体に対しても上記作業を行ったが、H^+脱共役作用、増殖阻害・細胞死誘導を示すものはあったが、分化・誘導作用を示すものは殆ど見られなかった。その他種々の理由から、阻害剤は細胞内酸性顆粒のV-ATPase自体に作用するよりは、むしろ細胞膜上の阻害剤受容体に作用して分化細胞死誘導...