尿路感染症を引き起こす大腸菌(E.coli)の簡易迅速検査法の開発

  • 中村 雅彦
  • Nakamura Msashiko
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Publication date
April 2016

Abstract

金沢大学医薬保健研究域医学系1.PCR法による病原因子遺伝子の分布解析患者尿および対照として健常人糞便から分離された大腸菌計402株のType1 pili、P pili、S pili、CNF(cytotoxic necrotizing factor)、SAT(secreted autotransporter toxin)の5つの病原因子の遺伝子の保有状況を調べた結果、Type1 pili遺伝子保有率はともにほぼ100%(それぞれ97.0、97.2%)でありType1 pili遺伝子検出を用いた病原性評価は困難であると考えられた。それ以外の4因子は尿由来株と糞便株との保有率の間に一定の有意差は見られた。特にP pili遺伝子の保有率は44.6%と高かった。尿由来株の保有率はP pili、S pili、CNF、SAT遺伝子の順に44.6%、12.5%、16.9%、23.3%であった。糞便株では19.8%、3.8%、2.8%、8.5%であった。2.発現レベルでのType1 piliの迅速検査法の検討Type1 piliを尿から直接検出することで大腸菌による尿路感染症を迅速に検査する方法を検討した。Type1 piliのreceptorは膀胱の上皮細胞上に広く分布するmannoseであることがわかっている。そこでmannose残基を表面にもつモルモット赤血球と大腸菌との凝集反応を、実際の尿路感染症患者尿および健常者尿を直接検体に用いて検討した。その結果、培養検査との比較から感度85.7%、特異性56.1%であり、今回検討の方法では偽陽性率が高く、このままでは実際に臨床応用することは困難であると考えられた。これは赤血球表面に多数存在する糖鎖やタンパク質の影響を受けたためと推察された。現...

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