金沢大学附属病院我々のグループはヒトPBC肝組織にて、病期の進展に伴い発現遺伝子群が変化していくことを、cDNAマイクロアレイを用いた多数遺伝子発現をもとに解析した。これから、臨床的にPBCが顕性化した病期を解析するだけでは、PBCの病態を理解するためには不十分である事が判明している。本研究においては、自己免疫反応の生じ始めた段階に遡り、更にどのようなカスケードにて免疫現象が進行し、胆管の消失に至るかの解明を試みた。このためにPBCに必須ともいえるという2つの条件をみたしたCK19-PDCE2 Tg miceの作製に成功した。蛋白の発現はmRNA及び蛋白発現にて証明された。また、系統の掛け合わせにより、発現量を更に多いdouble transgenic miceの系を確立した。これらCK19-PDCE2 Tg miceにおける発現形質の解析を行った。自然発症の有無が今回の実験目的の大きな課題の一つであったが、通常のTg mice50匹を生後1年の時点でsacrificeしたが、組織学的に胆管障害は認めなかった。また、肝機能検査にて血清ALT, ALPは正常範囲内であり、PBC診断の血清学的マーカーの一つとされている抗ミトコンドリア抗体も陰性であった。Double Tg miceについては、現在長期観察中だが、生後24週の時点でのsacrificeでは陽性所見は認めなかった。PBCの病因として、PDC-E2の胆管細胞細胞質での異所性発現が原因か結果かについて、以前より議論のあるところであった。本研究で作製したマウスにおいて、PDC-E2異所性発現のみではPBCを惹起し得なかったことは、今後の病態機序解明において有用であった。(2004年アメリカ肝臓病学会にて口演発表)今後何らか...