金沢大学がん進展制御研究所PYPAF1/Cryopyrinは寒冷刺激で皮膚炎や関節炎など全身性に炎症を起こす遺伝性疾患FCASの原因遺伝子である。また、アダプター分子ASCを介して、NF-κB活性化およびcaspase-1依存性IL-1β活性化を誘導する分子である。我々はPYPAF1によるNF-κBの活性化を阻害する分子IPN-2を見いだし、その機能を検討した。IPN-2は構造的特徴からPYNODと改名した。PYNODはPYPAF1やCARD12をASCと共発現させた場合やASCを過剰発現させた場合に誘導されるNF-κBの活性化を阻害したが、MEKK1やMyD88の発現やTNFα刺激によるNF-κBの活性化は阻害しなかった。また、PYNODはASCの過剰発現によるアポトーシスも抑制したが、BidやFasの発現によるアポトーシスは抑制しなかった。このことからPYNODはASCを介したNF-κB活性化やアポトーシスを選択的に阻害する分子であることが示唆された。一方、PYNODはPYPAF1とASCを介したcaspase-1依存性のIL-1β分泌を阻害した。さらに、caspase-1の過剰発現によるIL-1βの活性型への転換と分泌も阻害したことから、PYNODはcaspase-1によるIL-1βの切断(による活性化)を阻害するものと考えられる。PYNODの蛋白間相互作用を検討したところ、PYNOD自身、ASC, caspase-1, IL-1βと結合し、RIP、TRADD、IKKγ、Bidとは結合しなかった。以上の結果から、PYNODのPYPAF1に対する阻害作用は、ASCやcaspase-1の活性を阻害することにより発揮されることが示唆された。研究課題/領域番号:16659081...