はじめに / Ⅰ イラクの政治・社会状況とダアワ党の創設 / Ⅱ ダアワ党の理念とシーア派宗教界 / Ⅲ ダアワ党指導部とその変遷 / おわりに現代イラクは,劇的な政治変動を経験している。概観すると,1958年の共和国革命から1968年のアラブ社会主義バアス党(H__・izb al-Ba‘th al-‘Arabl^^- al-Ishtira^^-kl^^-,以下,バアス党)政権成立までは,三つの政権が短期間のうちに入れ替わる,不安定な時期であった。一方,1968年から2003年までのバアス党政権では,数々の戦乱にもかかわらず,国内体制は比較的安定を保っていた。2003年以降はきわめて混乱した状況が続いている。本稿で扱うイスラーム・ダアワ党(H__・izb al-Da‘wa al-Isla^^-ml^^-ya,以下,ダアワ党)は,1958年革命前夜に発足し,不安定な10年間で勢力を拡大した。その後バアス党政権の苛烈な弾圧を生き延び,イラク戦争後の2005年には,イブラーヒーム・ジャアファリー(Ibra^^-hl^^-m al^^-Ja‘farl^^-)党首を移行政権の首相に輩出するなど,イラク政治の中枢に躍り出た。現代のイラク政治における,ダアワ党の重要性は論を待たず,現在,その研究は緊要の課題と認識されつつある。ダアワ党理解においてひとつのカギとなるのは,シーア派宗教界との関係であろう。例えば,2005年1 月の国民議会(国会)選挙に先立ち,ジャアファリー党首は現在のシーア派最高権威であるアリー・スィースターニー(‘All^^- al-Sl^^-sta^^-nl^^-)師とナジャフで協議を行い[al-Zama^^-n 2004],同師の支持をとりつけた。また,2005年12月...