Contributions to genetics of Bombyx, with special reference to mechanisms of manifestation of characteristics, 2

前述の結果から普通斑紋を構成する眼紋に対する遺伝子的要素と半月紋, 星紋に対する遺伝子的要素とがNlの欠失部分に相当する相同染色体部位に存在し, 従つて普通斑紋遺伝子として表わされるものがNlの欠失のためhaploidの状態にあると考えられるに至つた. 即ち, 単一遺伝子の形質発現力をこれによつて知ることができるわけである. ところがNlに於ける斑紋, 特に半月紋, 星紋はその変異性が大きく, 極端なものは半月紋, 星紋を欠き, 或は半月紋部の前半に僅かに着色が見られ星紋も痕跡的のもの, 半月紋が前半だけで後半がちぎれた状態に不完全発現し星紋も淡く色づくもの, さらに逆に極端なものは半月紋が中央部附近で縊れたようになり, その後半部は輪廓不完全で星紋も僅かに褐色を増す程度のもの等を生ずる. これら種々の変異型は交雑の相手によつて着色度が濃淡いずれかの方向に偏るのと同様に, 半月紋, 星紋の発現の不完全さも或程度の偏りを示すのである. そこで形質の純正を期する目的で半月紋の出現程度を\u22完全に現われないもの\u22と\u22不完全に出現するもの\u22とにわけて数年に亘つて淘汰を行つた結果, その淘汰の効果が半月紋の出現する方向には完全であるのに対し, 欠如する方向へは或程度進み得るが, それには限度があつて, それ以上には進行し得ないことがわかつた. このことは変異性の大きい形質の淘汰に於ける遺伝学的解釈に一示唆を与えるもので, 注目すべき現象であると思われる