本研究では、日本語母語話者11 名に10 のトピックに関するパーソナル・ナラティヴを実施し、視点表現の出現傾向について分析を行った。分析の結果、日本語教科書で、迷惑や被害を表す表現として導入される受身表現に加え、移動表現についても他者から受けた不快な行為を描写する際に用いられることが分かった。また、使役表現は、典型的な強制の意味よりは、授受表現「てもらう」との組み合わせで感謝を示す際に用いられていた。以上の結果から、教科書で視点表現が扱われているトピックと日本語母語話者の使用が認められたものが必ずしも一致しないことが示された