大気汚染の人体におよぼす影響に関して,疫学の分野では,持続性せき.たん有症率,慢性気管支炎有症率など呼吸器症状に関する指標が,影響の有無を検証するための指標として用いられてきた(1~10)).この呼吸器症状に関する指標は種々の質問を用いた住民調査によって得られるが,なかでもBMRCの質問票は標準的な質問票として広く用いられてきた.BMRCの質問票は面接方式を原則として開発されたものであるが,面接方式は自己記入方式に比較して人的・時間的コストが大きく,自己記入方式で実施された例もある(5, 7)).また,一方,我が国における大気汚染物質濃度は,特に硫黄酸化物を中心として低下しており,これに伴って有症率の低い地域の調査が重要となってきた.春日ら(9))は,このように有症率の低い地域の調査では,母有症率の推定範囲が有症率の大きさに比較して広い範囲となることを強調している.さらに,大気汚染以外の因子(性・年令・喫煙歴などの他,職業歴・既往歴など)が有症率の大きさを変動させる重要な因子となってくる.従って,春日ら(9))も述べているように,今後の調査に於ては,大きなサンプル・サイズが必要となってくると考えられる.そして,自己記入方式は,大きなサンプル・サイズを得る方法としての利点を有しているため,この方式の意義を論じることは重要と考えられる.従来より,自己記入方式で実施して得た有症率(質問によっては有訴率という表現の方がより適当と思われる場合があるが,以下ではこれらも含めて有症率という)の信頼性について,面接方式と比較した多くの報告がある(7~10)).表-1にこれらの報告の研究方法を示した.従来の報告の第一のタイプ(表-1・A)は,同一対象者に対し,面接と自己記入の2方式で調査を実施...