乃南アサ『水曜日の凱歌』は、終戦直後から翌年年四月までの約一年半を、主人公二宮鈴子という一人の少女の心象を中心に描いている。本論は、作品に描かれた背景的効果や役割を分析し、「子ども」という時間から静かに成長していく過程での、少女の気づきや戸惑いを作品内に考察したものである。そうした意識のあり様は、かつて樋口一葉が「たけくらべ」の美登利の姿にも描いていた、もう二度とあの無邪気さには引き返せない、茫然とした気づきの切り取りでもあるだろう。また本作においては、最も身近にいる母親という存在を(あえて終戦直後という限定的タームだからこそ可能として)示すことにより、さらに鮮明化させているのである。急速に進化する科学の中にある現代に、あえてこうした意識世界を描くのもまた、現代文学の重要な役割の一つともいえるのかもしれない
現代を紐解くツールの重要な一つとして、家族という括りが重要な要素となっている。村上龍『最後の家族』は、二〇〇一年に発表された作品で,家族四人それぞれの、意識の動きや有様を、主語や視点を変えながら、我...
天津市の書道教育は日本にない中国独特の経歴を有しており、国を挙げてその教育を推奨している。天津市の瑞景小学校を訪問し、その実際を目にすることができた。徹底した指導と特色を地域や国内に成果を残すものであ...
21世紀をむかえ、義務教育段階の学校で形成すべき学力のあり方が模索されている。しかし、「狭い基礎学力」をさす「読み書き計算」の習熟、「PISA型学力」「リテラシー」論等と近年の学力論をめぐる問題は混迷...
乃南アサ『水曜日の凱歌』は、終戦直後から翌年年四月までの約一年半を、主人公二宮鈴子という一人の少女の心象を中心に描いている。本論は、作品に描かれた背景的効果や役割を分析し、「子ども」という時間から静か...
小川洋子『密やかな結晶』は一九九四年初出の作品であるが、二〇二〇年英国のブッカー国際賞最終候補となったことから再び注目されている。作品に描かれた世界では、一つずつ何かが消えていく。それは、そのモノや...
近代国家の成立期に形成された自然権を基礎として、個人は自由かつ平等であり生命、自由および財産等についての権利を権利章典により保障しているアメリカによって、日本の憲法改正草案は起草された。また、資本主義...
本稿では、家族の会話の中での人称表現の使い分けに注目しつつ、世代差や性差によって呼 称(呼ばれ方)の使い分けがどう変化するか考察した。その結果、①目上から目下に対しては 名前で呼ぶ、②目下から目上に...
本研究は、本学作曲専修のカリキュラムの到達目標の一つとして位置付けられるオーケストラ作品制作に向けての作曲指導法、及び演奏審査会における学生オーケストラによる作品演奏に向けての演奏(アンサンブル)指導...
日本文化の伝統的な自然観であるアニミズム的自然観が、現代日本文学のテクスト空間においてどのように表現されているかを明らかにするために、大江健三郎『芽むしり仔撃ち』(一九五八)、森敦『月山』(一九七三...
伝統的に「戦争が条約に及ぼす効果」と呼ばれてきた問題は,現代では「武力紛争が条約に及ぼす効果」という名称の下で検討されるようになった.この「武力紛争が条約に及ぼす効果」の規律構造を巡っては,伝統的議論...
古典派,ロマン派の時代,またそれ以前にも,ヒルデガルト・フォン・ビンゲン,クララ・シューマン,ファニー・メンデルスゾーン=ヘンゼルをはじめ,幾人かの女性作曲家が知られているが,当時の社会的制約から,作...
本稿は,現代中国における男女賃金格差の真相に迫るべく,先行研究75点から抽出した629推定結果のメタ分析を試みた。その分析結果は,体制転換期における中国の男女賃金格差は,統計的に有意かつ経済的にも意味...
未成年期における政治意識の形成過程に関する研究は、政治的社会化研究という名の下でここ30年近くにわたって欧米で蓄積されてきた分野である。なかでもアメリカにおける研究蓄積は、膨大な数にのぼる。それに対し...
ネットサービスで使われている行動ターゲティングは,行動ログを用いたマーケティング手法の一つである.この手法によって我々の生活は非常に便利になっている.他方,日常生活において人々は,痕跡(行動ログ)の微...
本論文は、現在ドイツにおける「リスク・マネジメント会計制度」の在り方とその意味につき、解明することを試みるものである。ここにおいて問題とされるのは、企業内部の管理の仕組みたるリスク・マネジメント・シス...
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