On Ferdinand de Saussure's TROISIEME COURS DE LINFUISTIQUE GENERALE (d'apres les Cahiers d'Emile Constanitin) (2)

小稿は、前稿「ソシュール『一般言語学第三回講義』覚書‐時間、次元と空間‐」（池見澄隆氏編『冥顕論‐日本人の精神史‐』所収）に続くもので、その第三章、第四章に該当する。フェルディナン・ド・ソシュール（一八五七 ‐ 一九一三）は生前、ジュネーヴ大学において三回の一般言語学講義を行ったが、小稿は、その第三回のエミール・コンスタンタンのノートに基づいて、ソシュールの言語学説における、時間と空間の問題を論じようとするものである。前稿は、ソシュールがラングに時間を導入し、二つの言語学通時言語学と共時言語学を立てようとする過程において、共時言語学の時間が見失われてゆく謎を追った。また、その謎と、彼の不思議な次元観面を一次元とする次元観との関わりについても、具体的に述べた。小稿は、それらの問題の根本にある、彼の時間の観念が、線条性に由来することを論じようとする。線条性は、彼の言語学説の中で、言語記号の第一原理とされる、恣意性と並んで、第二原理とされるものである。線条性はまた、単一空間性とも呼ばれるが、第二原理には従来、充分には検討されて来なかった内容が、多々含まれている。取り分け線条性の有する時間、次元、空間に関しては、共時言語学との関わりにおいて、今後追究されるべきテーマが、幾つも見出だされるのである。小稿においては、まず講義の本文に即して、第二原理の内容を明らかにし、彼の時間の観念に迫ろうとする。参考までに、前稿所収の図１｜図12、参考図１｜３を末尾に掲げた。ソシュール一般言語学講義共時言語学通時言語学恣意性線条性単一空間