【目的】B6C3F1マウスは、放射線の分割照射によって高率に胸腺リンパ腫(thymic Lymphoma, TL)が発生する。我々は放射線照射後、前リンパ腫細胞が出現する時期以後の胸腺細胞やリンパ腫細胞においてIL-9受容体の発現が高くなること、またIL-7による増殖促進効果が見られること、この効果はIL-9によってさらに増強されることを報告した(Nishimura et al. 2004)。すなわち、胸腺内サイトカインの増殖応答性の変化がリンパ腫発生において重要な役割をもつと考えられる。前大会では、C57BL/6(B6)マウスの胸腺リンパ腫細胞におけるIL-9R-JAK1-STAT3/5シグナル伝達経路の活性化に関する予備的結果を報告した。本研究では、B6マウスに加えて、TLの発生率が低いC3Hマウスの胸腺リンパ腫におけるJAK-STAT経路活性化について検討した。【材料と方法】5週齢B6またはC3H雌マウスに、X線1.6Gyを1週間間隔で4回照射し胸腺リンパ腫を誘発した。腫瘍細胞のIL-9R及びその下流のJAK-STATシグナル伝達経路関連タンパク質(IL-9R、JAK1、STAT1、 3と5)の発現および活性化状態をWestern Blotting法で調べた。一方、腫瘍細胞からDNAを抽出して、IL-9R promoter領域の塩基配列を解析した。【結果と考察】正常胸腺細胞ではIL-9Rが殆ど発現しないのに対し、両系統のTLともIL-9Rが高発現していた。B6マウスでは、下流のJAK1-STAT3/5高活性化とSTAT5の標的遺伝子であるcyclin D1の高発現が認められた。B6マウスではIL-9R-JAK-STAT3/5- cyclin D1の活性化しているTLは高...