【背景】貧困灌流とは脳主幹動脈狭窄・閉塞により脳灌流圧が低下し、自動調節能による細小動脈の拡張が限界に達した状態であり、脳梗塞の危険因子であることが知られている。脳循環予備能が低下している状態であり、その判定には炭酸ガスやアセタゾラミドに対する血管反応性の低下が用いられるが、この反応性が循環予備能を反映しているかどうかを微小血管レベルで確認されていない。本研究では貧困灌流モデルマウスを作成し、2光子励起顕微鏡によりこの対応を観察することにより、炭酸ガス血管反応性は循環予備能の指標になりうるかを考察した。【方法】雄性C57/BL6マウス(8-9週齢)の頭頂葉に頭蓋窓を作成し、レーザードップラー血流計により安静時及び炭酸ガス吸入時の脳血流を片側総頚動脈結紮前、結紮1日、7日、14日、28日後に測定した。また2光子励起顕微鏡により安静時及び炭酸ガス吸入時の皮質細動脈、毛細血管、細静脈の径を同日程で測定した。結紮15日後にMRIにより結紮側に梗塞巣はみられないことを確認した。【結果】結紮術後の安静時脳血流及び炭酸ガスによる脳血流増加率は術後1日後から28日後まで有意に低下した状態が持続し、貧困灌流であることが示された。2光子励起顕微鏡測定の結果、術前の炭酸ガスによる細動脈、毛細血管、細静脈の血管拡張率はそれぞれ22±3%, 7±4%, 2±1%であった。結紮術後各血管は拡張し、14日後における拡張率はそれぞれ90±35%, 57±32%, 32±11%であった。また、この時の炭酸ガスによる血管拡張率はそれぞれ4±1%, 3±2%, 1±1%であり、細動脈の血管拡張率は術前と比較し有意な低下を示した。【結果】貧困灌流においては自動調節能により皮質微小血管、特に細動脈が拡張し、同じく細動...