近年,自動車の高性能化,多様化が進んできており,快適性向上の観点から,シートに着座した人体の振動特性やシート特性と快適性の関係を明らかにすることが求められている.快適性を構成する要素は多数あるが,その中でも重要なものとして,振動が乗員の快適性に与える影響,すなわち振動乗り心地が挙げられる.快適性に関わる振動に関しては,特に旋回走行時や加減速時,凹凸路面走行時などに生じる低周波揺動は人が不快と感じやすく,また乗員の揺れも大きくなるため,このような低周波数領域における同特性が快適性に対し重要となる.しかし,自動車シート着座状態においては,人体と着座するシートは動的に連成しており,乗員の着座姿勢や身体特性だけでなくシートのサポート形状や材質によってもその応答が変化する.快適性向上のためには最適なシート形状や材質を検討することが非常に重要である.また,自動車乗車時の振動暴露を考えると,運転者としてだけでなく助手席の同乗者,後部座席の同乗者と様々な状況がある.すなわち,着座位置によって振動影響は異なってくるのでシートに求められる性能も異なる可能性がある.特に運転者と同乗者を考えると,姿勢の違い,運転操作の有無など大きな違いがあると考えられる.従って,本研究では低周波振動を考慮した振動乗り心地における運転者と同乗者の違いを明らかにした上で,それぞれにとって快適性の高い最適なシート条件を検討することを目的とする.本研究では,まず低周波入力の加振実験を通して運転者と同乗者の能動性に伴う挙動の違いを観察した.その結果を踏まえ,運転者条件と同乗者条件で最適なシート条件を検討するために,シート評価実験を行ない,これらの結果から,運転者,同乗者にとって最適なシート条件について考察した.本論文は以下の...