わが国の交通政策は欧米先進諸国の様々な影響を受けており障害者・高齢者の交通政策においても類似した政策の展開が進んでいる。この点からも欧米の政策研究はわが国の政策に少なからず役立つと考えられることから、過去30年の動きを整理することが本論の狙いである。研究の対象は先進的な対策を行ってきた米国、カナダ、スウェーデン、英国、日本の5ヵ国を対象とした。研究の目的については以下の2点とした。第一は、各国の制度の特徴を整理したうえで、障害者・高齢者のモビリティ問題と深く結びついている、差別禁止法などの人権にどの様に結びついてきたかを明らかにすることである。第二は、地域交通システム発展の原動力になったSTS (Special Transport Service: 高齢者・障害者に限定してサービスするシステムのこと、ここではSTサービスという)やそれに関連する公共交通のアクセス確保などが、どの様に展開してきたかを明らかにすることである。1. Background There are two main direction how local transport system for elderly and disabled (E&D) has been developed, and how the measures have been taken. First, the situation disabled cannot participate socially has been regarded as legal discrimination, especially with remarkable changes in the United States of American, Unite...