Data Replication Technique using Probabilistic Consistency

より高い計算処理性能や大規模データの取り扱いへの要求から, 近年分散処理システムに関する多くの研究が報告されている. 分散処理システムの中でもシステム全体をストレージとして利用するものはデータグリッドと呼ばれており, ここで取り扱われるデータは最大で数ペタバイトに及ぶ大規模なものが存在する. データグリッドでは, そのままでは一つの計算機を利用したストレージシステムよりも信頼性が劣ってしまうため, データ複製と呼ばれる技術が利用されている. データ複製によって, データオブジェクトを複数分散して配置することで, 信頼性および応答性能の向上を図ることが可能となる. その一方で, データ複製は複製オブジェクト間の一貫性をどのようにして維持, 管理するかという問題を引き起こす. これはデータ複製における本質的な問題となっており, この間題を解決するために, 様々な一貫性モデル及びそれらを利用したプロトコルが提案されている. 提案されている一貫性モデルの中でも, 複数のオブジェクト間で常に一貫性がとれた状態を維持するモデルは, 強一貫性と呼ばれている. この強一貫性を利用した分散処理システムとして, デュアルクォーラムシステムが提案されている. デュアルクォーラムシステムでは,クライアントの読み取り/書き込み要求に対しそれぞれ専用のクォーラムを用意し, 各専用クォーラムが連携することで, 強一貫性を維持しながらアクセスコストの削減を試みている. 強一貫性に対して, アプリケーションの要求に応じて一貫性の厳密性を緩和し, それによって一貫性の維持コストの削減を図ろうとする考え方も提案されている. その中でも特に, 最新オブジェクトが取得できる確率を尺度として導入したモデルは, 確率的一貫性と呼ばれ, この確率的一貫性をデュアルクォーラムシステムに適用したプロトコルも先に提案されている. 本論文では, 先に提案された確率的一貫性プロトコルを改善し, 同等の一貫性でよりアクセスコストを改善したプロトコルを提案する. またシミュレーションによって, 提案プロトコルの評価, 及び従来プロコトルとの比較を行う.首都大学東京, 2012-03-25, 修士（工学