近年,内分泌撹乱物質としてのダイオキシン類の環境汚染が社会問題となってきており,汚染の有効的な除去法として従来の方法より低コストのバイオレメディエーションが注目を集めている。そこで,本研究では,従来からダイオキシン類の生分解についての報告の多い白色腐朽菌の産生するリグニン分解系酵素に着目し,これらの酵素群をコードする遺伝子を導入したトランスジェニックシロイヌナズナを作成するためのクローニングに取り組んだ。リグニン分解酵素群の中でも有害汚染物質の分解に関する報告の多い,リグニンペルオキシダーゼ(LiP),マンガンペルオキシダーゼ(MnP),ラッカーゼ(Lac)の3種類の酵素をコードする遺伝子に着目し,そのクローニングを行った。まず,これまでに報告のあったリグニン分解酵素群をコードするcDNAの塩基配列を参考に,数種類のプライマーを作製し,白色腐朽菌,P. chrysosporium(UAMH3641)およびT. versicolor(UAMH 8272)のcDNAをテンプレートとしてRT-PCR法を行い,数種類の増幅産物を得た。これらの増幅産物のcDNA断片の塩基配列をDNAシークエンサーで解析し,得られた配列についてNCBI-BLASTのDNAライブラリで相同性の検索を行った。その結果,P. chrysosporiumのLiP及びMnP, T. versicolorのLacのそれぞれcDNA中に,ライブラリ中の配列と高い相同性を有するものが見い出された。そこで,バクテリオファージラムダと大腸菌ゲノム間の類似組み換え反応を応用した遺伝子クローニングシステム(Gateway Technology/Invitrogen)を用いて,LiP, MnPおよびLacをコードする完全長cDN...