本報告書は、平成21~23年度の日本学術振興会科学研究費による研究成果をとりまとめたものである。 これまで、少子化の進行のもと教育改革が推進されるなかで、学校施設の改善・充実が図られてきた。しかし一方で、自治体の財政難、学校統廃合の必要性、さらに最近では学力の向上が重要な課題となっている。このような中、今後の学校施設整備の在り方が改めて問われている。 本研究は、少子化が顕著になった過去四半世紀の我が国の学校施設整備の総括をめざすもので、この間の学校施設の政策動向と実際の進行状況を分析するとともに、重要であるにもかかわらず本格的な検討がされてこなかったハード(施設)とソフト(運営・管理)のマッチング等、学校運営からみた成果の検証を行い、上記の課題に迫ることを目的に進めてきた。 まず、第1章では、臨時教育審議会が設置された当時から今日までの国の学校施設整備に関わる政策を整理するとともに、市町村教育委員会に対する質問紙調査によって、この間の小中学校施設整備の実態と動向を明らかにしている。 次いで第2章と第4章では、小学校における教育方法等の多様化政策の象徴ともいえる「オープン型教室」を取り上げ、3都県7校の教員を対象とするアンケート調査をもとに、「オープン型教室」整備の成果と課題を分析している。教室とオープンスペースのつくり方の違いによって教員の評価結果は異なること、そして、厳しい評価も存在することなどを示している。 また、第5章から第7章は、今日、中学校における新しい校舎形態として注目されている教科教室型校舎を研究対象としたものである。第5章と第6章の論文では、事例分析により教科教室制の成果と課題、そして教科教室制が機能するための条件を学校運営面を中心に検討している。第7章は、...