政策・行政評価は、日本では1990年代後半から「行政改革」の一環としてクローズアップされた比較的新しい問題であり、研究課題としても自明というわけではない。従来の行政学で言えば「行政管理」のカテゴリーに包摂されていた概念であろう。今日の「行政改革」には歳出抑制のための行政の「効率性」だけでなく、国民に対する「説明責任」を含む行政の「透明化」(情報公開)や国民の「参加」も要請されている。とりわけ、教育政策・行政は多くの国民が関心を寄せる対象であり、したがってその「評価」は政策過程に直接フィードバソクされることも求められる。例えば、「学力調査」の結果によって政策変更を余儀なくされるような事態も生ずるのである。「百年の計」といわれる一方で、教育政策・行政の評価にはそのような脆さも内包しているのが現実である。本研究ではそのような脆さの側面を「教育政策評価研究の課題」としている。確かに政策評価法によって各省庁は自らの政策を「評価」することを義務づけられて、その「評価手法」が求められた。それに応えるために、本研究組織のメンバーによる先行研究として諸外国の事例研究等を行ってきた実績がある(『教育行政における諸外国の評価制度およびその実施状況等に関する調査研究』平成12年、『教育行政における評価手法の在り方に関する調査研究』平成13年)。本研究ではそれらをさらに深化させるとともに、教育における「政策・行政評価」がもつ性格・特性に関して、政策評価と行政監察の違い,成果主義的教育行政管理論の可能性,学校施設整備政策の評価,児童福祉施設の指定管理者制度導入のインパクト,ドイツ及び米国の教育政策評価の動向,などの個別テーマにより教育政策評価の現状と課題を明らかにした。また,都道府県の政策評価体系におけ...