本報告書は以下の構成となっている。第1章では、ドイツの教育改革の大きな流れを整理した。その中で、学校の自律性と教育提供の多様化・個別化が展開していることを整理する。第2章では、1990年代後半に入り、従来からの「生活の場」としての学校から、国際学力調査の結果、基礎学力向上が重要な教育政策となった過程を明らかにする。それによって、従来の平等原理から(能力に応じた)多様化原理へと教育政策の重点が展開したことが示される。第3章では、学級経営の概要について紹介する。日本では30人学級の議論が盛んであるが、ドイツの学級規模はそれよりも一般に小さい。学級経営という視点からすると、院本以上に親密な人間関係づくりが学級経営の基盤となっている点を指摘する。第4章は、教育評価をめぐるものである。日本では平成14年度から指導要録が絶対評価となった。ドイツでも絶対評価が基礎となっているが、その評定は厳格に運用されており、留年や進学等に大きな影響を与えている。しかし絶対評価に付随する主観性による公正さ確保の問題は、ドイツでも課題となっていることを指摘する。第5章は、教育の多様化政策の典型的事例である才能教育について取り上げる。ドイツでは近年、才能教育を障害児教育と同様に特別な教育として理解し、才能ある者に対してより成長を促すための制度的取り組みが進んでいることを指摘する。第6章は、教育の多様化政策の中で、教育価値に特色を持つ学校について紹介する。1992年の連邦憲法裁判所の判決によって、公立学校中心のドイツの学校制度が変化しつつあることを提示する。日本のチャータースクールや教育特区等の参考となるような事例も紹介する。第7章は、私立学校として日本でも著名なシュタイナー学校の概要を紹介する。ドイツのシュタ...