本研究は、「知の総合化をめざしての総合的な学習」という観点から、高等学校の総合的な学習の実態を調査・研究することを基本的目標としている。今、日本の学校教育では、学力が大きな教育課題になっている。その結果、総合的な学習、体験的な学習、各自の興味・関心に基づく学習等への消極的な雰囲気も一部に広がりつつあるように見える。しかし、人間がなぜ学ぶのですかという問いに対しては、古今東西、かならずと言って良いほど、人間らしく生きるために学ぶのですという回答が帰ってくる。「人は人間らしく生きるために学ぶ」というのは、現在でも真理として厳然として存在している。ただ、それでは、現実にどういう学びを展開することが、人間らしく生きるためエネルギーの源泉の獲得になるのかは必ずしも明確でなく、慎重な計画と実践による積み重ねが必要になる。特に、高等学校となると、発達段階からして、学習が専門的に細分化された系統的な知識の獲得へと重点が移っていく傾向がある。もちろん、人類の文化遺産ともいうべき系統的な知識の青年層への伝達は成人の責務でもあり、これはおろそかにはできない。しかし、それだけでは、青年期の学習として十分だとは言えない。そこで、今、各高等学校では系統的な知識技能の伝達と人間らしく生きる力の育成を融合した学習活動を創造するために、総合的な学習の時間の活動に多様な創意工夫をこらしている。本調査ではその実態が明らかになった。そのひとつとして、地域人材の活用・伝統的な文化の修得のための体験学習など、多様な工夫がなされ大きな成果をあげている様子が明らかになった。同時に、解決すべき各種課題も表面化してきた。これにより、これからの高等学校教育の在り方についてある示唆を与えたものにもなっている