本書は,文部科学省科学研究費補助金による研究「算数・数学教育における創造性の育成に関する内容や指導法の国際比較研究」(特定領域究「新世紀型理数科系教育の展開研究」:平成17~18年度1研究代表者瀬沼花子)(課題番号17011075)の中間報告書として作成したものです。これはそれ以前の2つの特定領域研究,すなわち,平成14年度の「算数・数学教育における創造性・独創性の育成に関する日米露韓の国際比較研究」,平成15~16年度の「算数・数学教育における創造性の育成に関する政策とその実情の国際比較研究」の延長上にある研究です。本研究の目的は,諸外国及びわが国における創造性育成に関する取り組みを,算数・数学の教育課程,内容,指導方法等について,現状や課題を検討することにあります。いろいろな国の取り組みを含めるために,創造性を包括的に「新しい問題状況において独創的に思考し新しい結果をうみだす能力」と位置づけておくこととしました。科学上の発見や技術的成果をうみだす才能ある人々(Excellence)の育成と同時に,すべての生徒(All)に高次の思考が身につく教育課程や内容や方法も視野に入れています。平成17年度は,アジア圏の算数・数学の内容や指導法を中心に調べることを目的としました。具体的には主として次の3つを行いました。1つめは,創造性育成に関するアジア圏とわが国の数学教育の特徴分析です。2004年12月に結果が公表された国際的な学力調査(OECDPISA,IEATIMSS)の結果の露次分析を行いました。2つめは,海外現地調査です。今回は中国・北京の名門校について10月に調査を行い資料を収集しました。3つめは,過去3年間の結果をまとめる枠組み作りと新たな資料の収集です。創造性教育の現状や...