有意味図形認知に及ぼす色彩効果に関する研究 : Rorschach仮説の実験的検討

Rorschach Techniqueの色彩効果に関連して,Siipola, E.が反応潜時を測度として実証した仮説「無彩色図形と彩色適合図形を比べた場合認知の困難度に差異がない.この両図形と彩色不適合図形では,後者の認知が困難である.不適合図形認知の困難度の個人差は,色と形のコンフリクトのために,不適応と関係がある.」を,有意味図形を使って,タキストスコープによる提示条件(実験I)及び明瞭度の変化するカラースライドによる方法(実験II,III)で検討した.その結果,無彩色図形と彩色適合図形は認知困難度に差異がないことが大体認められた.(気質類型によってかなり差があった.また適合色の適切性,被験者の構成に問題があり,再検討の必要がある.)彩色適合図形は,適合色が完全に与えられると,彩色不適合図形よりも容易に認知された.気質類型と,彩色-無彩色,適合-不適合の関連はある程度認められたけれども,探索的研究段階で不備な点が多いので,この結果から結論を導くことはひかえる.人格特性と色-形のコンフリクト量との関連は認められなかったが,彩色図形を不明瞭な段階で正確に把握できることと,"良き人格"とは関連があることがわかった.今後の研究課題は,無彩色-彩色の効果を再検討すること,適合-不適合の効果をRorschach事態に近い条件で検討すること,不適合図形に対する認知のおくれと人格特性,不適応の関連をさらに検討することである.departmental bulletin pape