肥大型心筋症患者のうち、約25%が左室流出路の狭窄を示す閉塞性肥大型心筋症(hypertrophic obstructive cardiomyopathy,以下HOCMである。HOCMは突然死のリスクが高く、日常の運動耐用能が低下する予後不良の疾患である。肥大型心筋症治療のガイドラインによると、有症状のHOCMに対する治療は、まずβ-blocker・シベンゾリン・ジソピラミドなどの薬物治療が行われた後、その有効性が不十分な場合に、外科治療、ペースメーカー植え込み、経皮的中隔心筋焼灼術(perctaneous transluminal septal myocardial ablation,以下PTSMA)が考慮される(図1)。PTSMAは、肥大心筋を栄養する中隔枝に選択的にエタノールを注入し、人為的な心筋梗塞を惹起するカテーテル治療である。人為的に肥大心筋を壊死させることにより、左室流出路狭窄の軽減、自覚症状の改善が期待できる。PTSMAは1994年に 初めて行われた比較的歴史の浅い手技で、まだエビデンスの蓄積が不十分である。そのため、外科手術はNYHA3度以上の症状あるいは意識消失発作があり、薬剤抵抗性かつ50mmHg以上の左室内圧較差を認める場合、Class Iの適応となっている一方で、PTSMAはClass IIの適応に留まっている。しかしその治療効果や低侵襲性から、実臨床では1994年から世界で5000例以上実施されており、過去45年間の外科治療の数を上回っているのが現状である。当院においても、2008年から 2012年の間に、HOCM3症例に対するPTSMAを経験しており、その短期?中期成績について検討したので報告する