ニューラルネットワークは、並列処理、非線形性、学習能力といった特長を有するシステムであり、様々な分野へ応用されている。本論文では、ニューラルネットワークの性能向上及びそのディジタル通信受信方式への応用を目的とし進められた一連の研究について述べている。まずニューラルネットワークの性能向上法として、動的なパターン認識に適したニューラルネットワークと学習アルゴリズムの高速化について述ベ、次にニューラルネットワークのディジタル通信受信方式への応用として、適応等化器への応用と、符号分割多元接続(CDMA)通信のマルチユーザー検波への応用について述べている。第1章では、まず、ニューラルネットワークとそのディジタル通信受信方式への応用の歴史について述べている。次にニューラルネットワークの原理と本論文で検討するディジタル通信受信方式である、適応等化器と, CDMA通信のマルチユーザー検波の原理について述べ、その次に本論文の位置付けを行なっている。ニューラルネットワークをパターン認識へ応用する場合、従来は評価データの分布が時不変な静的なパターン認識が主に検討されおり、評価データの分布が時変である動的なパターン認識はほとんど検討されていない。また、従来ニューラルネットワークの学習に用いられている逆伝播法は収束に時間がかかるという欠点を有しており、収束の高速な学習アルゴリズムが必要とされている。そこで第2章では、まず、 ニューラルネットワークの基礎理論について述べた後、動的なパターン認識に適用可能な、選択的に教師なし学習を行なうニューラルネットワーク(SULNN) を提案している。SULNNは、学習データで学習済みのネットワークの出力値をもとに、評価データに対してシステム白身で教師信号を生成し学習...