1.‘津之望’は1974 年に果樹試験場口之津支場において,‘清見’に‘アンコール’を交雑して育成された早生カンキツの新品種である.2001 年よりカンキツ第9回果樹系統適応性・特性検定試験に系統名カンキツ口之津37 号として供試した.その結果,新品種候補としてふさわしいとの合意が得られ,品種登録出願を行い,2011 年5 月24 日付けで,種苗法に基づき第20788 号として品種登録された.また,2012 年3 月にはみかん農林18 号に農林認定品種として認定された.2.樹勢は中程度,樹姿は直立性と開張性の中間である.枝梢は長くて太く,密生する.隔年結果性は‘べにばえ’や‘アンコール’より低い.浮き皮はほとんど発生せず,裂果は‘べにばえ’や‘アンコール’よりも少ない.そうか病にはウンシュウミカンよりも強い傾向があり,かいよう病にはネーブルオレンジと同程度に弱い.CTVに強く,ステムピッティングの発生はほとんどない.3.各地における試作結果から,果実は180 g 程度で,扁球形である.果皮は橙色で,果面の粗滑は中である.果皮の厚さは平均2.4 mm で薄い.剥皮性は中で浮き皮はほとんど発生しない.果肉は濃橙色で,じょうのう膜はやや軟らかく,肉質はやや軟らかく多汁である.果汁の糖度は12%程度でやや高く,酸度は0.84 g/100 ml 程度である.成熟期は育成地で12 月下旬である.含核数は6 粒程度である.果肉に含まれる総カロテノイド含量は3 年平均値で3.76 mg/100 gFW とウンシュウミカン‘興津早生’よりも有意に高く,β - クリプトキサンチン含量は1.82 mg/100 gFW とウンシュウミカン‘興津早生’と同程度含まれる.4.成熟期は露地栽培で概ね12 ...