渡来人の問題は、日本歴史の文化を研究する上で重要な課題である。一般には、渡来人は稲作とともに日本列島に入ってきたとされている。しかし、考古学の資料を見ると、古くは稲作が渡来した以前の縄文時代前・中期には、日本列島において、大陸文化に極めて類例した新しい文化要素が、すでに出現していたことが判明する。特に、顔に刻まれた入れ墨を特徴とする土偶などは、大陸の黄河流域における新石器文化に見られる入れ墨の形象と、ほぼ完全に一致している。入れ墨は、古代中国においては刑罰の一種であり、その起源も大変古い。入れ墨の刑を受けた者は、ただちに辺境の寒冷な北方地区に追放されるのが常で、二度と故郷に戻ることはなかった。このため、受刑者が追放された地方もまた、「鬼」の国と呼ばれていた。アジア東北地域に広く存在していた「鬼」の信仰など、この地域一帯で古くから密接な交流があったことを物語っている。初期に日本に上陸してきた「渡来人」とは、入れ墨の刑を受けた大陸からの流刑囚であった可能性を提起したい。彼らの影響によって日本列島では「紋身黥面」という風習が起こったのではなかろうか
仏教の説話文学に登場する「捨身飼虎」の物語は、インドでつくられ、中国の千仏洞の壁画に描かれ、やがて日本の法隆寺にある厨子の側壁に再現されることになった。しかしこの絵はその残酷なシーンのためか、わが国...
この小論は、『古事記』の所伝の成り立ちに考察を加えたものである。仲哀天皇の崩御をめぐる所伝が類型に則って成りたつことをまず指摘する。その所伝に通じる『日本書記』の所伝は、その類型に合わず、仲哀天皇の崩...
徳川時代は、ヨーロッパで経済学が独立した学問として登場してきた思想的な激動期に対応している。西洋の思想のある分野――とりわけ自然科学思想――は日本学者に研究され普及してきたが、しかし西洋の政治・経済...
部落解放運動、いわゆる水平社運動の最高指導者として知られる松本治一郎は、一九四九(昭和二四)年二月二四日、公職追放となった。松本が戦前「大和報国運動本部」の理事であったことが、同本部の上部団体である...
トカラ列島から奄美・沖縄の琉球文化圏の墓制は、亀の甲墓や破風墓、積石墓、崖下葬、その他、いろんなタイプがある。墓制によって、また地域によって先祖祭りの仕方もちがってくる。 これらの地域の広い意味の祖...
中巌円月は個性のある文筆僧として、五山文学の隆盛に絶大な貢献をなしている。その文学には作者の波乱万丈の境涯での深い思考、練磨された人生があり、現実社会に即して作られた経綸思想、当時の中国人にも劣らな...
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拙論は、漱石的エクリチュールが有する強い傾向性を、具体的なテクスト解釈を通じて明らかにしようとしたものである。 漱石の初期テクストにおいて、見ようとする意志はそのまま描こうとする文体的衝動と化してし...
旺盛な繁殖力・生命力をもつものは、同時に不思議な呪力をも持っているが、桃も例外ではない。桃の呪力に関する伝承は、中国の諸史書にみられる。たとえば、古代の帝王や諸侯のあいだで行われた喪式・盟会・進食など...
十七世紀以来、幕府の長崎貿易体制のもとに、長崎を訪問する中国人と丸山遊郭の遊女の間に大規模で、かつ多様な交流が存在したことは周知の事実である。この交流は日中貿易の繁栄がもたらした副産物だけではなく、...
晴山亮一、加藤勝夫、賢治の三人が、「月のよいひんやりした晩」温泉から温泉へと「深夜の温泉めぐり」をした時のことである。先生はわたしら俗人には見えないものを見る人だった。だから、その真偽のほどはわからな...
本稿は、戦後日本のマルクス主義経済学の第一人者であった宇野弘蔵(一八九七―一九七七)の東アジア認識を、主に戦時中に彼が執筆した二つの広域経済論を手掛かりに検討する。「大東亜共栄圏」は、「広域経済を具...
満州は、かつて政治的には日本と「特殊の関係」を持つ地域とされた。また「赤い夕日」の「郷愁」に象徴されるように、日本人にとって「特殊の感情」を懐かせる土地でもあった。この特殊の関係・感情とはなにか、ま...
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