第I章では,全国立公園の全集団施設地区180ヶ所を分析し,国立公園の利用拠点計画の実態とその全容,および変遷を明らかにした。実態の全容では,既存拠点型と新規整備型とに分けられること。既存拠点型の立地が多様であるのに対し,新規整備型は画一的で自然への近接性と他の施設や集落からの隔絶性が高いこと。行政側の自由にならないものと無理な計画のものとが削除されたこと。などを明らかにした。また,行政当局によって整備された理想の集団施設地区である国民休暇村24ヶ所の計画が,立地に応じた多様性を取らず,多様な立地における画一性を取っていること。その画一の中身は,自然資源への過近接,拠点性の欠如,高い隔絶性,景観への配慮の薄弱さであること。を明らかにした。さらに変遷では,当初(昭和20年代半ばから30年代半ばまで)は集団施設地区の中心であった実質的利用拠点の既存拠点が昭和30年代後半以降軽視され,さらに昭和40年代以降は切り捨てられること。対して,当初は整備の担保もなく補完的役割であった新規整備型が昭和30年代後半は集団施設地区の主役になること。特に,昭和34年から整備が始まった国民休暇村がその後の集団施設地区計画に大きな影響を与えたこと。などを明らかにした。第II章では,全国立公園の建築物の高さの全規制事例214事例を分析し,国立公園の建築物の高さ規制の実態とその全容,そこに見られる現実の保護管理の考え方を明らかにし,審査指針に見られる理想の保護管理の考え方との相違を明らかにした。実態の全容では,高いものが多く,38.5mや40mといったかなり高い事例もあること。それは風景検討の結果ではなく,既存建築物の従前最高高を規制値としている結果であること。工作物と宿舎を区別せず建築物すべてを同一に規制...