当研究所が国立学校設置法により昭和24年5月31日に設立されましてから,ちょうど満10周年になりましたので,本日ごくうちわにその式典を催しましたところ,総長はじめ各位のご出席を得ましたことは,研究所一同欣快に存ずる次第であります.顧りみまするに,当研究所は,昭和17年にでぎました第二工学部が,終戦後,新大学制度実施に関連して研究所に転換したものであります.この転換に際しましては,当時62講座ありました学部をその半分強の35部門の研究所に変換する関係上,教職員の定員数の激減にたいする措置,教育施設を研究施設に変換することなど,いろいろな難問題がありましたが,前所長各位,総長はじめ学内外の各方面のご努力やご援助によりましてきわめて円滑に解決され今日に至りましたことは,深く感謝申し上げる次第であります.当研究所ができましたとき,いったい何を研究するところか,あるいは失業救済研究所ではないかなどという人もありました.しかし,これにたいしましては,われわれは事実をもって説明しようと考え,研究者・研究補助者および事務職員も一体となり,10年間黙々として努力してまいりました.その結果,研究成果がようやくみのりまして各方面にたいし有用な価値ある多くの研究ができ,今日におきましては,当研究所の意義が一般に認識されてきましたことは,各位とともによろこばしく思うところであります.今日までわれわれは,予算が少ないとこぼしながらも,不十分な予算のもとでできるだけの研究をしてまいりました.しかし予算が少ないと言いますものの,全国にある約60の大学付置研究所にたいし文部省が支出する予算の総額は,人件費をふくめて本年度は約45億円であり,当研究所は約3~4億円を使いますので,予算総額の1/12程度に当り,こ...