産業用の直動システムは、油圧及び空気圧シリンダ、または回転式モータの動作をボールねじなどで機械的に直線駆動に変換するものが主流だった。1980年代から、物流システムや工場内搬送装置として用いられてきたリニアモータは、高推力化設計技術とセンサ、制御技術の進歩に伴い、工作機械の直動系や高速往復運動を必要とする分野などに広く用いられている。リニアモータには様々な種類があるが、特に永久磁石を用いるリニア同期モータ(PMLSM: Permanent Magnet Linear Synchronous Motor)は、従来のフェライト磁石系より約5~10倍の高い磁気特性を持つNdFeB系磁石やSmCo系磁石などの希土類系磁石を用いることで、モータの小型化、大推力化、高効率化などを図ることができるというメリットがあり、産業分野で応用されるケースが急速に増えている。しかし、大推力をいう観点から見ると、従来の縦方向磁束PMLSMでは空間内で極数や極ピッチを自由に調整することが難しいため、高い推力密度を得ることが困難な場合もある。このような観点から、近年横方向磁束PMLSMに関する研究が活発に行われている。横方向磁束PMLSMの大きなメリットとしては、巻線を巻く空間(電気回路)と磁束が流れる空間(磁気回路)が互いに分離されているため、電気回路と磁気回路が同一空間で各々の空間を占める縦磁束形に比べて数種類の形状の設計が可能であり、空間内で極数や極ピッチを自由に調整でき、高い推力密度を得ることができる。しかし、3次元的な磁束の流れに適した積層形構造の製作が困難な場合もある。本研究では、XYステージ用を想定した大推力横方向磁束PMLSMを提案し、大推力密度を得るための考え方と現在産業分野で要求されてい...