センチネルリンパ節生検(sentinel node biopsy: SNB)は術前評価で原発巣T1-T2, かつ臨床的N0症例では標準手技となっている. センチネルリンパ節転移が陽性であった場合は, センチネルリンパ節以外の腋窩リンパ節(非センチネルリンパ節)にも転移の危険があるため, 腋窩郭清を行うことが一般的な治療指針とされてきた. しかし近年, 欧米の大規模な前向き臨床試験の結果により, センチネルリンパ節転移個数が2個以下の場合や, センチネルリンパ節転移巣が2mm以下の微小転移の場合では腋窩郭清を省略しても, 郭清を行った場合と比較して予後に影響を与えないことから, 今後は腋窩郭清を省略する方向に向かうことが予想される. しかし, センチネルリンパ節転移個数が2個以下の場合に, センチネルリンパ節以外の腋窩リンパ節である非センチネルリンパ節に転移が無いのか, あるいは転移の危険が少ないのか, については完全に明らかにされてはいない. したがって, センチネルリンパ節転移個数が2個以下での腋窩郭清の省略の安全性も確実ではないと考えられる. 今回我々は, 乳癌センチネルリンパ節転移陽性例における, さまざまな臨床病理学的因子と非センチネルリンパ節転移の有無との関連について調べ, また, 乳癌センチネルリンパ節転移個数が非センチネルリンパ節転移を予測するのに有用であるか否かを検討した. 2010年~2013年の期間に当科でセンチネルリンパ節生検を行った浸潤性乳管癌症例のうち, センチネルリンパ節転移が陽性で腋窩郭清が施行され, 年齢, 腫瘍浸潤径, 核異型度, 脈管侵襲の有無, ホルモン受容体発現, Her2受容体発現, Ki-67標識率などの臨床病理学的因子の検索が全て...