学位の種類: 博士(医学). 報告番号: 甲第3832号. 学位記番号: 新大院博(医)甲第572号. 学位授与年月日: 平成26年3月24日視神経脊髄炎 (neuromyelitis optica: NMO) は脊髄と視神経に病変の主座を置く中枢性炎症性脱髄疾患である. NMO ではアクアポリン4 (aquaporin-4: AQP4)水チャネルを標的とする自己抗体が血清中から検出され, 病理学的には広範なAQP4 染色性低下を伴う補体介在性の破壊性炎症性脱髄を認める. これらの知見から, AQP4 抗体はNMO 病変の形成において主要な役割を果たしていると考えられている. AQP4 は視神経, 脊髄以外の中枢神経系にも広く分布している. NMOは視神経や脊髄など特定の部位に病変を呈しやすいが, 既存の概念を越えて多彩な病変を形成することが明らかになっている. NMO 病変の分布や特徴の差異は,AQP4 の発現分布だけでは説明できない. この差異を生む機序を解明するために,NMO 病変の部位ごとの特徴を明らかにすることを目的とした.検索方法としては, neuromyelitis optica spectrum disorders (NMOsd) として, その脊髄にAQP4 の広範な低下を伴う補体介在性の破壊性炎症性脱髄が病理学的に確認された7 症例, 多発性硬化症3 症例, 対照4 症例の剖検脳を対象に,脊髄, 視神経, 大脳白質, 大脳皮質, 脳幹, 小脳について病理学的検索を行った. その結果, NMOsd の視神経, 大脳白質, 脳幹の病変では脊髄病変と同様にAQP4 の広範な低下を伴う補体介在性の破壊性炎症性脱髄が観察された. NMOsdの大脳皮質では, 補体の介...