本研究ではmixed medullary-follicular carcinomaの組織発生を明らかにするために臨床病理学的,形態学的,生化学的検討を行った.結果は次の様であった.1.臨床病理学的には,本症は通常の髄様癌に比し,1).男性に多い(6:1 vs 1:1).2).より若年者に多い(平均年齢36歳 vs 44歳).3).予后が良好である(5年生存率100% vs 78%).などの特徴がみられ,通常の髄様癌とは異なる臨床病理学的性格を示唆するものであった.2.髄様癌,mixed medullary-follicular carcinomaおよび種々の疾患の人甲状腺組織を用い,カルシトニン,サイログロブリンmRNA発現,蛋白発現をnorthern blot法,in situ hybridization法,免疫組織化学法を用い検討した.3.Northern blot法については甲状腺組織よりのRNA抽出に不備があり,このためカルシトニン,サイログロブリンmRNAの定量的観察が出来なかった.しかしin situ hybridization法,免役組織化学法についてはほぼ一致した結果が得られた.4.In situ hybridization法,免役組織化学法ともに,mixed medullary-follicular carcinomaでは髄様癌部にカルシトニンmRNA,蛋白共に発現しており,一方濾胞癌の部分ではサイログロブリンmRNA,蛋白共に発現していた.5.しかし,mixed medullary-follicular carcinomaの腫瘍細胞において,カルシトニン,サイログロブリンmRNA,蛋白は同一細胞において同時の発現は認められなかった.6.甲状腺髄様癌,甲状腺...