個人情報保護のため削除部分あり中世後期から近世にかけて、ブラーバントでは公家系の系譜を軸とした歴史記述が書き継がれてゆくが、一三世紀後半にこの伝統がどのような契機のもとで創りだされたのかは、これまでさほど明確に説明されてはいない。本稿は、まず公位継承をめぐる当時の政治的内乱と系譜的歴史記述の出現をテクスト分析から関連づけることで、それを説明しようとするものである。さらにすすんで、この系譜的歴史記述の発展が、一三世紀後半から一四世紀初頭のブラーバントに出現したとされる民族意識と深い繋がりを有していたことも明らかにしょうと努める。こうして、系譜的歴史記述が、前近代的な民族意識の形成に重要な出自と歴史を共有するという信念の要となっていたことが中世ブラーバントにおいて確認されるだろう。また、より広く前近代ベルギー地域における歴史記述の発展にかんする一側面も、こうした作業によって明らかになるだろう。Many historiographies based on the 'genealogy' of the duke's family of Brabant were produced from the later Middle Ages to the early modern age. However, few historians could explain why this tradition was made during the later 13th century. I try to find by text analysis, a concrete and close connection between the civil war for the succession of ...