本論文では、1970年から2008年までの日本について原則暦年ベースで、都道府県別、23産業別に産業構造と(質の違いを考慮した)要素投入、および全要素生産性(TFP)を計測する「都道府県別産業生産性データベース」(Regional-Level Japan Industrial Productivity Database、略称R-JIP)を構築し、サプライサイドの視点から1970年以降の日本の地域間労働生産性格差およびその変化の原因について実証研究を行なった。主な分析結果は次のとおりである。1)クロスセクションで見ると、資本装備率、労働の質、TFP全ての要因が労働生産性の地域間格差に寄与した。1970年において労働生産性の地域間格差を生み出していた最大の源泉はTFPと資本装備率の格差であった。このうち資本装備率格差の寄与は急速に減少したのに対し、TFP格差の寄与はあまり減少しなかった。一方、労働の質の地域間格差は、昔も今も地域間格差のうち比較的僅かの部分を説明するに過ぎない。2) 製造業は人的資本集約的な製造業の地方への集積、同一産業内で地域間TFP格差の縮小、といった過程を通じて、地域間の労働生産性格差縮小に寄与したのに対し、非製造業は、不動産、運輸・通信など資本集約的な非製造業が労働生産性の高い県に集積し、サービス、運輸・通信などの産業が資本装備率や人的資本を、東京をはじめ労働生産性の高い県に集中させるなど、格差残存に寄与する傾向があった。3) 成長会計の視点から実質成長率を見ると、資本装備率の上昇は当初貧しい県ほどおおむね高く、格差を縮小するように働いた。労働の質についても同様の傾向がみられる。一方TFPの上昇は豊かな県ほどやや高く、格差拡大に寄与した