複数の送受信アンテナを用いて並列伝送を行うことで,通信路容量を線形に増大可能な多入力多出力(MIMO : Multi-Input Multi-Output)伝送が注目を集めている.MIMO 伝送では,高い周波数効率を実現できる一方,受信機において多重化された信号から所望の信号を分離・検出する必要がある. MIMO 復調法として最も優れた誤り率特性を示すのは最尤復調(MLD: Maximum Likelihood Detection)であるが,莫大な演算量を要するため現実的ではない.そこで,変数ノードと観測ノードからなるファクターグラフ上でのメッセージ交換により,効率的に周辺事後確率を計算可能な確率伝播(BP: Belief Propagation)法によるMIMO復調法が提案されている.しかしMIMO通信路行列により定義されるファクターグラフは,全ての変数ノードと関数ノードが互いに結合しているため,多数のショートループが存在し,その復調性能はMLDと比べると著しく劣化する. そこで本研究ではファクターグラフにショートループが存在する場合にも正確に周辺事後確率を求める手法として,QR分解付き一般化確率伝播(QR-GBP: QR-decomposed Generalized Belief Proppagation)法を提案する.QR-GBP 法ではファクターグラフ上の幾つかのノードの集合から領域グラフ(region graph)と呼ばれるグラフを構成し,このグラフ上でのメッセージ交換によって,正確な周辺事後確率を計算することができる. QR-GBP 法はMLDに漸近する高い復調性能を示すものの,QR-GBP 法におけるメッセージ伝播アルゴリズムであるparent-to-chil...